番外.天の川に願いを

「あれ、今日って……七夕?」

 本当に不意に気づいて、は声に出していた。
 視線の先には、見事な天の川が広がっている。

 早朝からの早駆けに続き、午後は的場で弓練習と、一日中城での鍛錬に明け暮れていたは、城で湯を借りて一汗流したところだった。
 既に日は落ち、城の廊下と言えど手元の灯が無いと辛い暗さである。

 湯上りの体を冷まして行こうと、は縁側に腰掛けた。
 現代では決して見られなかった満天の星空を見上げて、涼しい風に身を任せる。
 訓練での適度な疲労感が癒されていくようで心地良かった。

「晴れだったら、確か会えるんだよね……」

 七夕伝説を思い出し、そう一人ごちた。
 織姫と彦星……天の川に隔てられた恋人同士が一年に一度の逢瀬を許された日――

 まだ無邪気で居た頃は、育ての両親と共に短冊に願い事を書いたものだった。
 子供心に、両親に見つからないようにこつそり書いた願い事――……

 ――貝をくれた人に会えますように――

 お守り代わりの貝合わせの貝……。
 本物の両親に会いたいと書かなかったのは、怖かったからでもあるし、育ての親に悪い気がしたからでもあったけれど……一番は、この貝をくれた人ならのことを大切にしていてくれたような…そんな気がしたから。

「願い事……か」

 年に一度の逢瀬。
 愛しい人に年に一度しか逢えない悲しさなのか、年に一度は逢える喜びなのか――
 もしなら……

 そう考えて、苦笑した。
 何も考えないまま、自然と口から呟きが漏れる。





  「政宗さんに会いたいな……」

  「博識な小十郎さんなら……」

  「そう言えば、成実さんはどうしてるのかな……」

  「あれ……綱元さん…?」


(※四択分岐。名前を呼んだ人がお相手な訳ではありません。
長さも甘さもバラバラですので直感でドウゾ)


060707
CLAP