凛とした涼やかな空気が満ちる夕刻――
 日が落ち、明かりが灯された城内の奥廊下を政宗は黙々と進んでいた。

 後ろにはいつものように付き従う小十郎の気配もあるが、珍しく緊張しているらしい。
 この強面が顔に似合わず過保護であることは政宗自身嫌と言うほど知っているが、それにしても思わず首を傾げてしまう。

「Hey, 小十郎。何をそうピリピリしてんだ? これからの趣向を知らないって訳でもねーだろうが」

 欠片も疑わずにそうからかえば、小十郎は渋面のまま無言を返した。
 政宗の笑みもそこで固まる。

「――Ha. オイオイ、まさか……」
「そのまさかです。私は何も聞いておりません――ちなみに綱元殿も姉上も同じく」

 昨夜、気分が悪くて荒れていた宴席でのこと。
 新入りの癖に恐れもせずに政宗の乱行を諫め、芸は出来ないから趣向をこらした宴席を用意すると申し出た侍女――
 普通なら一介の侍女が出しゃばるなと一笑に付すところだが、という娘はどこか普通とは違っていた。
 しかも、準備期間はたかが一日……更に昼間は政宗自身が連れ回していたし、通常の侍女としての仕事もこなしていた。

 この場合、何の伝手も権限も無い侍女としては、後見の小十郎や可愛がってくれる上の者を頼るのは当然だろう。
 本人の余裕ぶりからてっきりそうしているものと思い込んでいた政宗は驚き、そして笑みを浮かべて口笛を吹いた。

「お前らの手も借りてねぇとは、豪気じゃねぇか」
「全く、そのように面白がられて……こちらの身にもなっていただきたい」
「それは俺じゃなくてアイツに言えよ」
「無論、後できっちり話はします。――ですが政宗様、此度のこと、どのような結果となっても何卒この小十郎に免じて……」

 堅苦しくそう言い募ってきた傅役を振り返って、溜息をついた。

「相変わらず過保護だねぇ。まだ見てもいねーってのに気が早ぇんじゃねーか?」
「しかし……」
「まぁ見てろよ。俺のカンじゃ、ありゃかなりの負けず嫌いだぜ?」

 はっと息を詰めた小十郎を鼻で笑って、政宗は今度こそ足を止めずに歩き始めた。


 予感がする――この期待が良い意味で裏切られるだろうという予感が。


「――待たせたな」

 刻限は予め告げてあり、その時間を少し過ぎて昨日の部屋へ入れば、下座にぽつりとが頭を下げて伏していた。

 ざっと室内に目を走らせただけでも驚くに値する。
 政宗の座る上段近くに控える面子は伊達三傑と呼ばれる三人のみ――これは政宗が下知したことだから当然だ。
 だが、部屋の中には宴の支度どころか酒肴さえ用意されておらず、日も暮れきったというのに小さな灯りが一つ頼りなげに揺れているだけで、これ以上ないくらいに殺風景だった。
 しかも、供応役として少しは着飾ってくるかと期待していた本人は、女物の小袖ですら無く、道着のような簡素な一重袴姿で遠目になら少年にしか見えないだろう。

「面を上げな、。こりゃ一体どういうことか説明して貰おうか」

 言われたが顔を上げて、昨夜と同じように真っ直ぐに政宗を見つめる。
 その揺るがない瞳を見た瞬間、これもこの娘の思惑なのだと直感した。
 政宗は口元を引き上げて命じる。

「篤と『一風変わった趣向』とやらを見せて貰おうか」

 それを受けたも勝気な笑みを浮かべ、その場に再び額付いた。

「それでは、始めさせていただきます」

86.entertainment

 いつが始まりだったのかは分からない。
 最初に目が合ったあの瞬間かもしれないし、もっと後がきっかけなのかもしれない。

 だが、何かと言うとという侍女の言動は、政宗の目についた。

 女に対する興味本位とも、甘ったるい恋情とも違う。
 そういったものに関わらず、政宗の中の何かが彼女の存在に引っかかりを抱くのだ。
 それが明確で無い故に、気に障るとか苛々するということになる。

 実は異国語を解していることも発覚した時には、新しい玩具が増えたように気分が浮き立ったものだ。
 だが、物言わぬ玩具や従順な犬猫とは、彼女はあまりににもかけ離れていた。

 何かと言えば後見の小十郎を頼るし、成実を初めとした重臣たちにも可愛がられている。
 その癖、政宗だけには一線を隔てたように距離を置き、壁を崩そうとしない。
 今まで国主として臣下から距離を取られることは当然だったが、そのように最初から拒絶されているのは初めてだった。
 かと思えば、不意打ちのように好意のある笑顔を見せてくるし、政宗好みの勝気な面も見せる。

 気に入って傍に置こうとすれば距離を置き、政宗以外ばかりに寄っていく。

 平たく言えば、ここまで思い通りにならない臣下はいなかった。
 しかも女中である。

 自分の意に染まぬというだけでもおもしろくないのに、更に常に政宗と共に在る小十郎がまるで掌中の珠というほどに気にかけて庇い立てするものだから、より一層気分を害することも多かった。

 相手はあの小十郎で、政宗が命じればどんなことでも拒まないだろうという自負はあるが、後見という以外にも妹のように可愛がっているということがあるからか、どうもを政宗から遠ざけようとしているように思えてならない。
 侍女に推挙したのは小十郎自身なのだし考えすぎかとも思う……が、が政宗から逃げて小十郎の元に逃げ込んだ時――あの時抱き寄せるように政宗から遠ざけた小十郎は真剣な目をしていた。
 あれでは、兄というよりも……ただの男のようだ。

 それこそ考えすぎだと、そもそも例えそうでも関係無いと自分に言い聞かせて平静を保っていた――そんなある日だったのだ。

 執務時間の昼間に忘れ物をして、政宗は自分の足で部屋に取りに戻った。
 その時、部屋にはが居た。
 掃除中だというのは一目で分かったが、如才の無い彼女らしくも無く、政宗の足音にも全く気付いていないようだった。

 珍しいと思い、驚かせてやろうかと悪戯心がもたげたその時――
 不意に、が物入れの上に置かれたものに手を伸ばした。
 それが何かを認識した瞬間、政宗は声を荒げていた。

 「Don't touch! それに触るな!」

 ビクリと震えて振り向いたは目をいっぱいに見開いていた。
 とその向こうに見えたもの――赤い髪紐。

 唐突にズキリと痛んだ頭に舌打ちし、政宗は頭痛の元凶と思わしき髪紐を掴んで視界に入らないように自らの懐へ突っ込んだ。

 その髪紐は、いつの間にか政宗の懐に入っていたものである。
 記憶の一部が無くなっているという話を聞いた時には既に覚えも無いのに手元にあった。
 ということは、失くした記憶に纏わるものだということは明白で、ふと何かの焦燥感に捕らわれた時には見ずにはいられなかった。
 例えそれによって頭が忌々しく痛んだとしても――

 「……お前には関係ねぇ」

 なぜが触れることや尋ねることにそれほど反応してしまったのかは分からない。
 けれど、反射的に言ってしまった後に、傷ついたように揺れたあの瞳――今にも泣き出しそうな顔――

 堪らなく動揺している自分を、原因も分からないまま持て余さないわけがない。
 後ろめたさを感じ、早くその場から去りたかったというのに、はいつに無く食い下がった。
 そして言われた言葉――

 「だったら……捨ててしまわれれば…良いのでは……?」

 なぜか、ひどく腹が立った。
 部外者の癖に、無責任なことを言うなと言いたかった。
 しかし、それだけは言ってはならないと直感が訴える。

 伏せられたまま頑なに上げられない瞳がなぜか無性に気にかかったが、確かめる気にもなれなかった。
 だから、黙って背を向けたのだ――逃げるように。

 「捨てる……か。それが出来りゃ苦労しねぇ」

 言い捨てて、部屋を出て……出た瞬間から後悔だらけだった。

 傷付けた――そう思った。

 思った理由なんか関係無く、只管気分が悪くて、これ以上後悔する前に謝って無かったことにしてしまおうと思った。
 しかし、翌日現れたは能天気に笑っていて、その理由は成実とデートに行ったせいだという。

 「仲良いよ、俺ら。昨日も二人きりで城下に"でーと"行ったし」
 「あー…えっと……そりゃ、そうかもね……」

 政宗には話さないことも成実になら話すのかと思えば、どす黒い感情が膨れ上がった。
 嫉妬では無い――むしろ怒りだ。

 当の成実相手に稽古で憂さ晴らしをしたが、それもその後に起こった小田原統治上の問題でまた苛立ちがぶり返した。

 「つまんねーんだよ、次やれ、次っ!」

 自分らしくないのも、上に立つ者として最悪であることも分かっていた。
 けれど、痛む頭が、脳裏にちらつく泣きそうな顔が、小十郎や成実に感じた嫉妬以上の怒りが、冷静な思考を奪って酒を求める。
 訳が分からなくなる程酔って、何も考えられなくなりたかった。

 その為に美味いとも感じない酒を延々煽って、周りに当たる――
 どれだけそんな無為な時間が続いただろうか。

 「――恐れながら申し上げます」
 「…Ah!? ――

 耳に聞こえた涼やかな声は、大きくも無いのにその場に響いた。
 声の主を確認した政宗は、真正面から見つめてくる真っ直ぐな視線に縫い止められる。

 「女子にまで手を上げられるとは、いかに政宗様と言えどお戯れが過ぎるように思われます」

 ゆっくりと明確に紡がれた言葉は、間違い無く小十郎でさえはっきりとは言わなかった諫言であった。
 慌てて窘めた小十郎からの叱責にも頭はさげていたものの、心から畏まって無いことは明らかだった。

 「確かに戯れ過ぎたかもなぁ。だが、そこまで言うならアンタが何かやってみな。俺を満足させてみせろよ。It's entertainment! 余興だ。武家の娘なら舞くらい出来んだろ」
 「……畏まりました」

 静かな瞳だった。
 まるで猛獣が牙を隠して獲物を探っているような。

 「ですが、舞には自信がございませんので、その代わり一風変わった趣向で席を設けましょう。――明日の夜には……」
 「Wait! 変わった趣向ってのは大きく出たもんだな。だがな、俺は今何かやれっつったんだぜ? Now! You see?」
 「――明日までお待ちいただけない、と?」

 酔いが醒めていくのをこんな風に自覚したのは初めてだった。
 それも、あれだけ悪酔いしていた状態から、爽快に。

 「政宗様は、戦においては情報を集め、策を練り、効果を最大限に引き出す為に万全の準備を整えて臨まれる御方だと、そう聞いております。私も政宗様に習って、そのようになりたいと常々思っていました」
 「――Ha、戦も宴も同じだってか?」

 これだけ弁も学も立ち、しかも政宗に対して恐れも無く真正面から対峙出来る女が他に居るだろうか。
 一変して愉快さが込み上げ、笑いながら立ちあがる。

 「OK! いいだろう。おもしろいじゃねぇか! その怖いもん知らずな物言いは小十郎仕込みか?」
 「政宗様!」
 「あー、別に悪いとは言ってねぇよ。気の強い女は嫌いじゃねぇ。――ただし、つまんねぇもんだったら、そん時ゃ分かってるよなァ、?」
 「私のことなら如何様にも。ですが……」

 脅しにも屈しない。
 それどころか、その瞳が一層輝きを増して、政宗は身震いした。

「ですが、必ず……必ず、It's so cool!――って、言わせてみせます!」

 あれほど腹の底から笑ったのは久しぶりだった。
 異国語で政宗が好きな言葉を入れる辺り、よくよくこちらの心を掴んでいる。

 そうしてその翌日の今日。

 夜にはあれだけ大見栄切った宴が控えているというのに余裕を見せて成実と話していたを、政宗は遠乗りに連れ出した。
 隠していることの化けの皮を剥がしてやるつもりだったが、思いがけずが馬好きだったこともあって、ほとんどずっと馬の話だけで終わった。
 誰それの馬は脚力があるとか、どこ産の馬は毛並みも艶があるだとか……そういう話ばかりをしてしまった政宗も悪いが、それに嫌がるどころか楽しげに乗ってくる女もどうかと思う。

 とにかく、戻ってきたのは日暮れ前だったが、それから程なくして約束の刻限がやって来た。
 そうしてどんな趣向を整えているのかと思えば、『これ』である。

 確かに、小十郎や喜多を頼っていないなら、一人では用意する時間も無かっただろうが……


「OK, 始めな」

 面子が揃った仕切りなおしの『宴席』――
 政宗の言葉に深く頭を下げたは、静かに立ち上がると、廊下側の障子を開いた。

「本日、皆様の饗応として恐れながらもお手伝いくださる方々をご紹介いたします」

 酒肴でも持ってくるのかと思いきや、そう言ったの言葉の後に女の衣擦れが聞こえ、現れた人物に政宗は目を瞠った。

「まつじゃねぇか、いつきまで――」

 二人ともかつては敵だったが、今では伊達の主力武将である。
 特にまつは加賀の前田という大国の室で、小田原城に常駐しているいつきとは違い、国元に居る筈だった。
 夫の利家を置いて最近一人で頻繁に顔を出すとは思っていたが……

 驚く政宗たちに向かって、華麗な打ち掛けで正装したまつは優雅に微笑んだ。
 その隣で普段小袖さえ着ようとしないいつきまでが、桃色の打ち掛けに髪を下ろした愛らしい姿で神妙に腰を下ろす。

「たまたま通りがかりに面白そうなお話を聞きました故、僭越ながらこのまつも手伝わせていただきまする」
「オ…オラも、こったらキレイなべべは慣れねぇけんど、面白そうだし頑張るだよ!」

 たまたま? 通りがかり?
 驚きが冷めぬまま政宗が視線を向けると、は苦笑して畏まった。

「まつ様、いつき様には以前よりご好誼を賜っておりました。本日は宴席――美しい花はあるにこしたことはございませんので」

 いけしゃあしゃあと言ってのけるに、政宗は口の端を上げた。
 一体いつの間にこの二人を動かすまでの仲になったのかは知らないが、ますます面白い。

「なるほど、一風変わった意外どころを連れて来たな。だが普通花を添えるのはhostの役じゃねぇのか?」
「私が? ご冗談を。私に『花』は務まりません。私の役目は――コレです」

 政宗の言葉を一笑して否定し、はまつから受け取ったものを示して見せた。

「弓……?」

 小十郎の眉根が寄る。
 主の前で武器を出すとは――そういう反射的な勘気だろう。
 しかしが掲げたのは、実戦で使うのよりは些か小ぶりの弓矢だった。鏃の部分に布のようなものが巻かれている。

「僭越ながら、舞よりも弓矢の方を嗜んでおります。座興代わりにご覧くださいませ」

 座興と言う割にはまだ酒の一滴も用意されていないが、は構わず部屋にあった小さな灯りを引き寄せた。
 暗くなった室内から何をするのかと見守っていれば、それを持ったまま縁側に進み出て、手に持った2本の矢の鏃を灯りに翳す。
 火が鏃に移ったのを確認したは、なけなしの灯りさえ消してしまった。

 そして、唐突にその火矢を番え、キリキリと弦を引き絞る。
 今やたった一つの光源となった火矢――それが向けられているのは、闇夜に沈んだ漆黒の……庭。

 キンと研ぎ澄まされたの集中は一瞬の内に矢の先に集まり、比の打ちどころがない姿勢から迷いも無く放たれた。

 それは刹那の出来事――

 続け様に2本放たれた火矢は、軽快に空気を裂いて真っ直ぐに飛ぶ。
 そしてその進路上に配されていた篝櫓に次々と火を灯した。

 左右それぞれ五本ずつの篝火が一瞬にして辺りを照らし出す。
 火矢が最後に小気味良く刺さったのは一際大きな篝櫓で、篝火で出来た道の終点のそこ――池の橋上には、どういう仕組みか物見櫓のような物が設えられていた。

「――いつき様、まつ様」

 の静かな声に頷いて、二人がその横に並ぶ。
 まずいつきが打ち掛け姿のままハンマーを振るうと季節外れの雪がはらはらと落ち始め、続いてまつが薙刀を振るって巻き起こった風が綿雪のようにそれを舞わせた。

 篝火に照らされて、粉雪が舞い踊る――それはさながら、季節外れの蛍のようだった。

「――fantastic……」

 思わず魅入って呟きを漏らした政宗に、は嬉しそうに微笑んだ。
 そして弓を置き、縁側から庭を示す。

「それでは皆様、どうぞお席へ――」

 どうやら、最初から宴席はここでは無かったらしい。

 促されるまま庭に下りて篝火の間を歩き、突如出現したその宴席へ向かう。よくよく見ると氷で固められた櫓であることが分かり、その上に敷物や円座などが敷き詰められていた。
 更に一通りの酒器や肴が用意されている。

 この即席の宴席もいつきの雪属性で作ったのだろうが、翌日になれば溶けて後片付けもいらないという寸法なのだろう。

 氷と言っても敷物のお陰で冷たくも無いし、野外だが篝火に照らされて暗くも無い。
 そして開放的な上に、舞い続ける雪がこの上も無く幻想的だった。

「Ha――やられたな」

 ここまでお膳立てされれば、悔しいというより愉快な気分で、政宗は心からそう一人ごちた。
 手渡された朱塗りの杯に、いつきが並々と酒を注ぐ。

 それを持ち、賛辞を与えようとこの飛び切り粋な宴の仕掛け人を見遣れば、彼女は更に悪戯な笑みを浮かべてこう言った。

「今宵は十五夜――皆様の杯に映るのは、満ちた月です」

 言われて見れば、確かに空には美しい満月がかかっており、杯に注がれた酒にもそれがそのまま映っていた。

「……I see. それで昨日じゃマズかった訳か」

 ようやく合点がいった政宗に、は笑みを深くした。
 耳に慣れた穏やかな声音が、まるで謳うように朗々と続きを紡ぐ。

「満ちた月は、期の熟した天下――それを喰らい、飲み干すのは独眼竜――政宗様でございます」

 政宗は隻眼を大きく見開いた。
 見つめたその先で、が笑みを浮かべたまま強い眼差しを返してくる。
 見つめ合ったのはほんの僅か、けれど沸き立つように高揚する心は誤魔化しようがなかった。

「――Ha! HaHaHaHaHa!」

 込み上げて来る衝動のまま高らかに笑い、政宗は一気に杯を煽った。
 満月の映った美酒を飲み干し、喉元を通って五臓六腑に沁み込んでいく熱い感覚に笑みを刷く。

「こんな粋な宴は初めてだ! 礼を言うぜ、!」
「――Were you able to satisfy it?(ご満足いただけましたか?)」

 どうしてもその言葉が欲しいらしいに、政宗もニッと太い笑みを浮かべた。
 合格どころか、満点の上を行く仕掛けである。
 全てが政宗の好みで、ここ数日抱いていた苛立ちもキレイに霧散してしまった。

「――It's so cool very much!!」

 開放的かつ幻想的な月見酒――そして笑っている

 今夜の月のように満たされていく自分を感じながら、政宗はいつもより数倍美味い酒を心行くまで楽しんだのだった。








080517
CLAP