「ずるい! 私もサンタ衣装欲しい!」
がそう叫んだのは、冬も深まってきたある日のことだった。
ラピードがスノーボードに乗って雪原を滑り降りるというボーダーラピードの会場。
丁度、『暴走おっさん』という人形を乗せてタイムアタックに成功し、レイヴンがタキシードを手に入れた所で、「どうよ、俺様の魅力!」と一通り自慢しまくった後のこと。
これで以外のメンバー全員がここで衣装を貰ったことになる。
ギルドの宣伝の為に撮影を兼ねたこの企画を催しているギルド四季折々の男は、眼を瞬かせた。
「はぁ、それは勿論、貴方もこういう人形持って来てラピード君が颯爽と走ってさえくれれば、喜んでご用意しますよ」
「本当ですか!?」
折角のクリスマスだし、サンタ衣装着てパーティで盛り上がりたい!と思うのは極一般の乙女心だと思うのだが、レイヴンはキョトンと首を傾げた。
「ちゃん、サンタって何?」
他の面々も全く同じような顔でを見ていて、そこからか! と思ってガックリ項垂れる。
「サンタって言うのは、赤い服に白い髭のおじいさんでー……」
そのままクリスマスとは何か、トナカイ、スノーマン、クリスマスツリー、プレゼント……と、冬の一大イベントについて一通り話して聞かせた。
というか、今まで衣装貰ってて気にならなかったのだろうか。
そういう細かいことには拘らない大ざっぱな所が、このギルドの性格なのだと思って諦めることにする。
とにかく、暦の上では丁度もうすぐクリスマスである。
そうとなれば話は早い。
そこから、は怒濤の頑張りを見せた。
まず、人形を入手することが第一目的だが、現実主義のは、他の人形のように森やダンジョンに隠されているなどという不可解なことは信じなかった。
他の人形を参考に自らデザインし、天地の窖に協力して貰って合成し、二日で手に入れた。(その際の料金を一生懸命値切っていた現場も見ていたユーリに、「暴走守銭奴」と勝手に不名誉な命名をされたが、リタを見習ってファイヤーボールをお見舞いしておいた)
そしてそれを装着したラピードに頑張って貰い、何とか決められたタイムをクリアすることに成功した。
しかし……
「えー! なんでサンタじゃないのー!?」
「そんなこと言われても、今回はこれなんで」
なんと景品は、が期待していたサンタ衣装では無かった。
レイヴンやフレン、ジュディスと同じフォーマル組――胸元が大きく開いたミニのカクテルドレスであった。
可愛いことは可愛いし、使用している生地から見てもかなり高価なものであることも分かるのだが。
「私はサンタ衣装が欲しいの!」
「いや……おっさんに言われても。いいじゃない、すっごく似合うと思うわよ、そのドレス! 良かったら今夜にでもおっさんと……」
「そういう問題じゃないのよ!」
またいつもの女好きな台詞を始めたレイヴンを一刀両断し、どうしてもサンタ衣装が欲しいはまだまだめげなかった。
そうだ、と何事かを思いつくと、早速おしゃれギルドのマダムに全部の人形の合体バージョンを作って貰い、再びラピードに装着する。
流石のハードボイルド犬士もふよふよ揺れる物体が9つも乗っていては邪魔そうだったが、特上骨付き肉で納得して貰って、再びボーダーラピードを訪れた。
「おや、ラピード君とお嬢さん。またいらしたんですか? でも、衣装をあげられるのは一人の人形に一つまでですよ?」
「ふっふっふっ、今日はプレゼンに来たの、お兄さん。ジャジャーン! ラピード~みんなの絆モデル~!」
「おおっ、これは……!」
食いついてきたのをいいことに、は畳み掛けるように語った。
「今までのラピードの活躍で、世の中に十分冬の素晴らしさをアピールすることが出来た! それは間違い無い! だけど、果たしてそれだけで良いのか……? 四季折々の素晴らしさ…そして感動を伝えてまで、真の四季ギルドと言えるのでは……!?」
「し…真の四季ギルド……!」
「これまでのキャッチコピーには何か足りないものがある……そう! それは人と人との絆!! まさに今年の流行語大賞に相応しい、素晴らしい言葉!」
流行語大賞?という疑問は華麗にスルーして、はビシリと指さした。
「キャッチコピーは、ズバリ! 『みんなの絆を大切に、ワイワイ楽しく滑る!』」
しばし沈黙が横たわり、いくら何でも適当すぎたかとが焦りだした頃、四季折々の彼は我に返って叫んだ。
「おおおおおおおおおおおお!!! お嬢さんは天才だっ!」
「えっ……いや、それほどでも……」
「是非是非、それでいきましょう! 世界中に冬の感動を! 僕に特別ボーナスを!」
本音駄々漏れな青年に心の中でガッツポーズをしつつ、はそれじゃあ……とにこやかに告げた。
「お願いがあるんです。もし成功したら、全員分のご褒美貰えますか?」
「うっ…そ…そうですね。全員の人形ですもんね……分かりました! 何とかします!」
「やった! じゃあリクエストなんですけど……」
更に景品のリクエストにも何とか頷かせ、そして見事ラピードは自己ベストをたたき出してコースを完走し――無事に、全員分の衣装の入手に成功したのだった。
そして――――
「「「メリークリスマス!!!!」」」
ダングレストの一画にある酒場を貸し切ったその晩、凜々の明星主催のクリスマスパーティーが開催された。
旅の途中であるので、真面目なフレンやエステル、リタ辺りはいろいろと難色も示したのだが、たまには息抜きも必要だと丁寧に説き伏せて決行にこぎつけた。
(お財布係の権限であの手この手の説得方法は試みたが、決して無理強いはしていない……最終的にはの言葉に打たれてくれたのだと信じている)
天を射る矢のレイヴンの声掛けも功を奏して、ユニオン所属のギルドや街の人々も参加し、中々大規模なものになっていた。
パーティー自体はパティを中心とした女性陣が腕を振るった軽食と歓談、時にはダンスも交えたくだけたものだ。
そこで一番大切なのが、凜々の明星扮するサンタたちがプレゼントを配ることである。
「メリークリスマス!」
お決まりの台詞と共に、小さなプレゼント――焼き菓子を配っていく。
中には凜々の明星の広告も入っているから、立派な宣伝である。
「ね…ねぇ、。こんなことして、本当に効果あるのかな?」
「何言ってるの、ボス! 日本の妙技ティッシュ配り方式を甘く見ちゃイカンよ!」
不安そうなカロル(トナカイ衣装)に請け合って、全て配り終わる頃には、荒くれギルド員たちによって会場は段々と酒宴の様相を呈していた。
「よし! それじゃあそろそろ、私たちも着替えてこよっか!」
ウキウキと声を掛けると、女性陣は意気揚々と頷いたが、男性陣はやれやれといった風情だ。
「なあ、あれって本当に着なきゃ駄目か? 俺はその辺で寛いでるから、お前らだけで……」
「駄・目!」
「窮屈なんだよなー、ああいうの」
「、僕も出来れば……いつもの鎧姿の方が何かあった時にもすぐに動けるから……」
「駄目だって、二人とも! 私、イケメンユーリとキラキラフレンのカッコイイタキシード姿楽しみにしてるんだから! ねぇ、みんな?」
が話を振ると、女性陣は一様に頷いた。
「えっと…そうですね。私も見てみたいです」
「まあ、たまにはいいんじゃない? 非日常は人間の脳を活性化させるって言うし」
「そうね、折角の夜ですもの。おめかしした人と踊りたいわよね」
「んじゃんじゃ! いつもながらはイイ仕事をするのじゃ!」
「ふっふっふっ、お嬢さん方、嫌がってる空気読めない若者たちは放っておいて、ここはおっさんの大人の魅力って奴を……」
「――しょうがねぇな。付き合ってやるか、フレン」
「そうだね。確かに女性だけ着飾らせてエスコートしないなんて、失礼だ」
「それじゃあ、早速着替えよう!」
端から見れば異様だったであろうサンタたちの会議も終わり、無事に話もまとまった。
しかし、わいわいぞろぞろと店に借りている更衣室に向かう一行の最後尾でおもしろいように項垂れてるレイヴンを見つけて、は苦笑する。
「レイヴンは行かないの?」
「ちゃん……最近おっさんに冷たくなぁい?」
「あはは…ごめんね? でも、レイヴンのタキシード姿も楽しみなんだから、早く着替えて欲しいなぁ。ちゃんとエスコートしてくれるんでしょ?」
「もっちろん! すぐに着替えてくるから、待っててね、ちゃーん!」
現金な回復ぶりを見せたレイヴンは手を振りながら猛然と更衣室に走っていき、ため息をついたもサンタ衣装を翻して着替えに向かったのだった。
華やかで楽しい音楽が会場を沸かせ、そこここでいろんな人が笑顔で踊っている。
会場を見渡せる二階の更衣室の前から手摺りに手を掛けて下を眺めていたは、軽く今までのことに思いを馳せていた。
四季折々の彼からご褒美として貰った全員分の衣装は、サンタ衣装とフォーマル衣装――それぞれ、足りない分を頼んだので、全員にこの両方が揃ったことになる。
折角この両方があるのだし、ということでクリスマスパーティーを企画し、仲間達の羽休めと凜々の明星の宣伝に活用しようと思いついた。
勿論、だけでは到底実現しなかったが、仲間達(主に女性陣)も大いに手伝ってくれたし、レイヴンの口利きでユニオンにいろんなギルドを紹介して貰ったのも大きい。
料理ギルド、演奏ギルドを中心に、おしゃれギルドや宴会ギルド、給仕ギルドまで……そんなものまであるの!?と聞きたくなるような大小のギルドの協力を無償で得ていた。
レイヴンと二人でそれらのギルドを回り、ギルドの宣伝になる、むしろタダで宣伝が出来る!と説いて歩いたことは記憶に新しい。
おかげで、会場の中はいろんなギルドの旗やのぼりで溢れかえっていて、オシャレなクリスマスナイトの雰囲気は皆無なのだが、これはこれで楽しいからいいか、とはご機嫌だった。
仲間達も男女一組になったり、大きな輪に加わったりして、それぞれダンスを楽しんでいた。
は更衣室の点検もしていたので後からこっそり会場に出て、ウェイターから貰ったカクテル片手に楽しそうなみんなをにこにこと眺めている次第だ。
さて、そろそろ店の人と撤収の段取りを打ち合わせようかと思い始めた頃、ふと背中から声を掛けられた。
「なんだよ、主催がこんなとこで壁の花か?」
「! ユーリ」
振り返ると、スラリとしたタキシードを着崩して、いつもは垂らしている髪を黒いリボンで一つにまとめたユーリが立っていた。
「ご心配なく、ユーリとかフレンで目の保養するのに忙しかったから」
ユーリに続いてやってきたフレンにも目を向けて微笑むと、ダブルのタキシードに赤いタイを締めたキラキラ王子は頬を染めた。
「僕らなんかより、の方がよっぽど、その……」
「中々似合ってるぜ、馬子にも衣装だな」
「ユーリ! そんな言い方は失礼だろう! こんなに綺麗なのに……!」
この二人はどんな時でも喧嘩腰なのだな、と仲の良さに感心はするが、恥ずかしいことを大声で喚くのは勘弁願いたい。
「ふ…二人とも、まだご飯もお酒も出るからゆっくり羽伸ばしてね。私は店の人のとこに行ってくるか……」
「――ちょい待ち」
そそくさとその場を離れようとしただったが、ユーリに手を取られて首を傾げる。
不遜な笑みを浮かべたユーリは、そのままの手を引いて階下に向かって歩き出した。
「ちょっ…ユーリ君!? お姉さんはお仕事が……」
「今日は仕事の羽のばしの為の宴会だろ? 一曲付き合ってくれよ、お姉さん?」
今時、ウインクをするのもそれが似合うのもユーリくらいではあるまいか、と思いながらも、はささやかな抵抗を試みる。
「でもほら、エステルとかジュディとか、若いお嬢さんと踊った方がさ、きっと楽しいよ?」
「あいつらとはもう一通り踊ったんだよ。つーか、こんな恰好させてこんなとこに引っ張り出した張本人だけ目立たずに済ませるなんて、そんな道理が通ると思ってんじゃないよな?」
「う……」
正論を突きつけられて言葉に詰まった瞬間に、ぐいと手を引かれたと思ったら……しかし引いたのはフレンだった。
「ユーリがそんな理由なら、僕と踊ろう、。女性を誘うのに、失礼にも程がある」
「いや、フレン……気持ちは有り難いけど、いま同情とかいらないっていうか……」
「同情なんて! 僕はただ、と踊りた……」
「フレンって、実は結構物好きだよなーっと」
「素直じゃない君に言われたくはないな、ユーリ」
「へいへい。とりあえず、その手離せよ」
「君が離すんだ。だって困っているじゃないか」
「困ってんのはお前のせいだろーが」
まさに両手に花状態だが、勘弁して欲しい。
は踊りたくもなければ、周りの女の子達から射殺されるような視線を浴びることも、なんであんな大して綺麗でもない女が?というようなやっかみを受けるのも遠慮したいのだ。
二人はそれぞれの手を掴んだまま本格的な口げんかを始めてしまい、どうしたものかとほとほと困り果てているところに救いの手がやってきた。
「女の子の手を握ったまま喧嘩なんて、最低よ」
ゴン!と痛そうな音が響き、ユーリとフレンが共に額を押さえて蹲る。
顔を付き合わせて睨み合っている所を両側から頭を押されたらしい。
「レイヴン……」
「探したわよ、ちゃん。――ってわけで、ちゃんをエスコートすんのは俺って決まってるんで」
の批難の視線をさらりとかわして、ユーリとフレンにそう言ったレイヴンだったが、二人が黙って引き下がる筈も無い。
「待てよ、おっさん。いつ決まったんだ、そんなの」
「さっきよさっき。ちゃんから直接お願いされたんだから」
胸を張って自慢げに言うレイヴンに、あれも『お願い』した内に入るのだろうかと首を捻っていると、ユーリがそら見たことか、とレイヴンを睨み付けた。
「そんならに選んで貰えばいいだろ」
「今回ばかりはユーリに賛成するよ。を困らせたくはないからね」
選ぶとか、そんな大層な身分じゃないのに……と思っていたら、また突然手を取られて、視線を向けたは……目を瞠った。
「俺と踊っていただけませんか?――美しいお嬢さん」
いつものいい加減さが嘘なくらいキッチリとタキシードを着たレイヴンがその場に跪いて、恭しく取ったの手に軽く口付けたのだ。
おまけにその体勢のまま下から見上げられて……これで赤くならない女性がいたらお目に掛かってみたい。
「………………はい」
妙な敗北感を味わいながら頷いたに微笑んで、レイヴンはそのまま完璧な所作で階下へと誘った。
後ろで罵倒しているユーリたちの声が遠ざかる中、は自分らしくない動悸を抑える為に、必死に深呼吸をするのだった。
「……レイヴン」
「ん? なぁに、ちゃん」
「随分手慣れてるのね」
「えっ!? い…いやー、ほら、騎士団でも一応必須教目だったからー」
初めは渋っていただったが、いつの間にか他の人達に混ざってレイヴンとくるくる踊っていた――そう、踊れていた。
現代で一般庶民として育って二十数年……ダンスなどする機会も無かったが、である。
踊りたくない訳では無く、踊れなかっただけのを見抜いて、連れ出す最中「大丈夫だからおっさんに任せて」と言ったレイヴンは、言うだけあって見事にリードしてダンス初心者のもいつの間にか踊れるようになっていた。
騎士団で云々は本当かもしれないが、これは相当場数を踏んでいる熟練具合だった。
何人もの美人とこうして踊ってきたんだ……と思うと、何だか胸が痛んだが、折角のクリスマスなので努めて考えないようにした……ところに、「何々、ちゃん、ジェラシー!?」などと嬉々として言うものだから、力が抜けてしまった。
「はいはい、そうかもね。ところで、ユーリとフレン置いてきちゃって良かったのかな?」
「……なーによ。ちゃんは青年たちと踊りたかったの?」
「そういうことじゃなくて、あのままだったら派手に喧嘩始め兼ねないと思って。流石のユーリもこんなとこで剣抜くほど考え無しじゃないと思うし、フレンもいるから大丈夫だとは思うんだけど……」
「はぁー。ダンス中に他の野郎の話するなんて、ちゃんひどい。おっさんの方がジェラシー感じちゃうわよ」
「え? あ、ご…ごめんね。レイヴンのリードがあんまり上手いから、あんまりダンス踊ってるって実感が……こういう時って、パートナー以外のこと考えるのは失礼ってことだよね?」
尋ねれば、突然ピタリと動きを止めたレイヴンは、じっとを見下ろし、手を引いて踊りの輪から抜けた。
「ちょ…どうしたの、レイヴン?」
「罰として、ちょっと休憩に付き合ってよ」
そうして壁際まで連れて来られて、二人して壁に凭れる。
ホールでは雑多にいろんな人が踊っているので、人が壁のようになって向こう側は見えない。
「大丈夫、レイヴン? 疲れちゃった?」
「んー、全然平気。ちゃん、ちょっと後ろ向いて」
「え? こう?」
言われるままに後ろを向くと、ふわりとレイヴンの手が後ろから回され……の心臓が大きく一度鼓動する間に離れていった。
「ほい、終わり」
「え?」
レイヴンに向き合って視線の先に手をやると、首と鎖骨辺りに知らない感触があった。
「ん、良く似合ってる」
笑顔で言われて慌てて窓に映して見れば、そこには繊細なデザインのネックレスがあった。
小ぶりの石が付いたそれは、派手すぎず質素すぎず、付ける服装を選ばない一品だ。
「レイヴン、これ……」
「クリスマスはプレゼントを贈るもんなんでしょ? だから、俺からちゃんに、愛を込めて!」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべて言うのは、反則だと思う。
は赤くなっているのを悟られないように手で隠しながらも、こちらも出来る限りの笑みを浮かべてありがとうと言った。
「そうだ、私もレイヴンにプレゼント用意してるの」
「えぇぇぇぇ!?」
用意しておいて自分は貰えると思っていなかったのか、大袈裟に驚くレイヴンに苦笑し、は声を潜めた。
「ここには持って来れなかったから後で渡すとして、今は目録だけね。なんと……幻の酒と謳われた――"首領ごろし"!」
ぬぁにぃぃ!?と大きな声が上がって一瞬周りの視線を集めたが、が慌ててその口を押さえて、シーッ!と黙らせる。
「声おさえて! 内緒にしなきゃ駄目なんだから!」
「いや、だって、かつて、あのドンのじいさんをも唸らせ、一遍に飲むのは勿体ないと数日分に分配させたという、あの!?」
「そう、それ。お酒ギルドの人と話してる内にふと秘蔵のお酒があるって聞いて、一本譲って貰っちゃった。レイヴンにはこのパーティーのことでもかなりお世話になったから、そのお礼も兼ねて」
の認識よりもよっぽどレアな酒なのか、レイヴンはしきりに「マジかよ……」とぶつぶつ呟いていた。
「レイヴンってあんまり身につけるもの持ってないイメージがあるからお酒にしたんだけど……喜んで貰える?」
「そりゃあ、もう!! いやぁ、もうこれでちゃんからほっぺにチューとか貰えたら、おっさん今すぐ死んでも……」
何だそんなことか、と思ったは、レイヴンの肩に手を掛け、つま先立ちして顔を寄せる。
リップ音も無いような触れるだけのそれをし、離れて首を傾げた。
「これで良かった?」
「………………」
「でも軽々しく死ぬなんて言っちゃ……レイヴン?」
「……………………」
急に石のように固まってしまったレイヴンの前でひらひらと手を振ってみるが、反応が無い。
何か変なことをしたかと思って焦っている所に、ユーリとフレンがやって来て、妙に笑顔で後は俺たちがやっとくと言ってレイヴンを引き摺って行ってしまった。
呆然としてそれを見送っただったが、思い当たるのは先ほどのキスくらいで。
「……それはありえないしなー……まあ、いっか」
女好きのレイヴンが、挨拶代わりのようなほっぺにチューごときで照れる筈も無いと結論付けて、とにかくユーリたちに任せていれば大丈夫だろうと、元の裏方仕事に戻ることにした。
歩きながらそっと胸元に手をやって、当たるネックレスの感触に微笑む。
みんなが笑顔で、も嬉しくて、最高のクリスマスだった。
「んー、クリスマス最高! メリークリスマス!」
ご機嫌なままが高らかに言ったその頃、店の裏手で上がったもう一つの悲鳴には誰も気付くことはなかったのだった。
111231
年の瀬にクリスマスドリでした!
ユーリとフレンも絡ませたら、思ったより長くなりました。
折角なので、逆ハー風でと思ったんですが……ただの当て馬になってごめんなさい。
時期的にはボーダーラピード出来るくらいですが、あまり深く考えてません。
フレン人形はクリア後だろう!とか、おっさん人形が最後っておかしいだろう!とかの突っ込みも無しでお願いします(笑)
とにかく年内に間に合った! メリークリスマス!(笑) 良いお年をー!