七夕ごっこ

「折角天の川もキレイに見えることだし、みんなで七夕やろうよ!」

 目を瞬くだけの彼らに、織姫と彦星の話から教えて、目を輝かせたエステルが一も二もなく飛びついたお陰ですんなり七夕飾りを作る流れになった。
 さて、まずは……

「七夕飾りと言えばカラフルな折り紙の飾りだけど……」

 言ってみて、初っぱなで躓いたことには気付いた。
 この世界にも折り紙はあるだろうが、こんな旅の途中に誰も携帯している訳がない。

「んー……よし! 要は色とりどりで綺麗だったらいいんだよ! 代わりにいっぱい花飾ろう!」
「花……です?」
「そうそう、その辺りに咲いてる花ね。風に揺れる方がきれいだから、小ぶりの草花とかを編んで垂らすとそれらしいかも!」

 その苦肉の策を実行すべく、全員総出で夜のお花摘みという難題に挑むことになった。
 野宿セットの中にあったランプをフル活用して何とか集められた多種多様の花が、新たに切り取られてきた笹と一緒に置かれる。

「さ、それじゃ頑張って作ろうか、エステル、リタ」
「えっ、あた…あたしも!?」
「当然。花の飾りだよ? 男がやるより、カワイイ女の子が作った方がいいに決まってるじゃない」

 が自信満々に言い切ると、ウンウンと言うように男二人が頷いた。

「そそ、さっすがちゃん! 分かってるわー!」
「まーそうだよな。野郎に花飾り作れっつってもなー」
「うっさい! おっさんとユーリは黙ってて!」

 嫌がるリタを宥め賺してエステルと三人でいざ飾り作りに取りかかったのだが……

「えっと……、こういう場合はどうしたらいいです?」
「え? えー……こう…これと組み合わせるとか…? あ、駄目だ……すっごいごちゃつく」
「リタ……その組み合わせはちょっと無理があるんじゃ……」
「ううううるさいわね! いいのよ、あたしのはコレで!」
「うっ……おかしいな。もっと簡単にできると思ったのに、意外と難しい……!」

 開始早々、早くもぐだぐだ感が見えてきた不器用女子三人を救ったのは、意外な救いの手だった。

「ね…ねぇ、それだったら、こっちと組み合わせた方がいいんじゃないかな? ここを巻いてこう止めるとか……」
「……やるわね、ガキんちょ」
「カロルすごいです! やっぱり器用ですねー」

 カロル=器用というスキルがインプットされた瞬間、はガシッとカロルの手を握りしめていた。

「カロル大先生! 力を貸して!」
「えっ……う…うん、僕で良かったら」

 照れて嬉しそうに頬を染めるカロルを抱きしめたい衝動と戦いながら、そのカロル先生の指導の元、何とか無事花飾りを完成させることが出来た。

「よっし! それじゃみんなで願い事書いて、笹に吊そう!」

 高い部分はユーリにやって貰ったり、レイヴンがカロルを肩車したりと、みんなで和気藹々と飾り付けに取り組む。
 そうして、ついに完成した笹を前にエステルが歓声を上げた。

「すごい……綺麗です! 天の川も良く見えてますし、これなら織姫と彦星も会えましたよね!」
「そうだね。ついでに目立つ笹の葉につるしたお願い事も、きっと叶えてくれるよ」
「目立つ……よね、確かに。でもこんなに暗いのに、空の上からでも見えるのかな……」

 少し不安そうに瞳を曇らせるカロルに、は不意にひらめいたことを口にした。

「そうだ! もっと目立つように、みんなの魔導器<プラスティア>も吊しちゃうってのはどう?」
「はぁ!? 何馬鹿なこと言ってんのよ! そんなことして、魔物に襲われたらどうすんのよ!?」

 やはりと言うか、真っ先に反対したのは自他共に魔導器馬鹿と認めるリタで……
 しかし、それを宥める為に口を開こうとしたよりも先に言葉を発したのはレイヴンだった。

「まあまあ、いいじゃないの天才魔導士少女。そん時ゃ、おっさんや青年がズバズバッとやっつけちゃうからさー」

 こいつでね、と弓を掲げて見せてリタが一瞬言葉に詰まったのを見計らって、は両手を合わせた。

「ね、リタお願い! 魔導器吊してちょちょっと光でも打ち上げればすっごく綺麗だと思うんだけど……」
「わ…分かったわよ。好きにすれば?」
「やった! 勿論リタも一緒にやるんだよ?」
「なっ…何であたしまで……!」
「友達としてそういうこと一緒にしたいなって思うのは当然だよ。ね、エステル」
「はい! やるならリタもみんなも一緒がいいです!」
「うっ……わ…分かったわよ」

 最大の難関を説き伏せて、全員が笹の周りに輪になって魔導器を外して吊す。
 吊したまま魔核<コア>の部分に手を当てて意識を集中し、が合図を叫んだ。

「行くよ、みんなー! せーのっ!」

 一斉にそれぞれの魔導器から光が上り、小さな花火のように空中で弾ける。
 パンパンと照らし出された色とりどりの光の下に、みんなで作ってみんなの願い事を吊して……みんなの大切な魔導器を吊した笹の葉の七夕飾り。

「……何か、こういうのイイよね。掲げた剣を交えて誓いを立てる戦友みたいで」
「馬鹿ね。みたいじゃなくて、事実そうでしょ?」
「そうだよね、魔導器は僕らにとって騎士の剣みたいなものだもんね」
「ワンワゥン!」
「はは、ラピードもそうだって言ってるぜ?」

「――うん。そうだね! ……織姫様ー!彦星様ー! また来年も、みんなで七夕できますよーに!」

 パンパン!と柏手を打って天の川に願い事を祈る。
 何やらいろいろと間違った知識を植え付けてしまった気もするが、みんなで楽しく七夕が出来ればそれで良いのだ。

 目を閉じて真剣に祈っていたら、後ろから次々に背を叩かれた。

「一人で言うなんて薄情だぜ、
「そうですよ! みんな願い事は一緒です!」
「俺様は、来年はちゃんともっともーっと仲良くなってますよーに!って……」
「黙れおっさん!」
「へぶっ!」
「あーあー、言わなきゃ殴られないのに……」
「バゥバゥ!」

 そんな風に傍で笑ってくれる仲間たちに向けて、は満面の笑みを浮かべた。

 ――明日も明後日も来年も……出来ることならずっとずっと、みんなの笑顔といられますように!








100709
番外編の七夕選択式ドリーム。
まさかの二日遅れアップで、時期外れ感ビシビシですみませんでした。
二つ目の選択肢はオールキャラ逆ハールート。
まだジュディスちゃんとかパティとかフレンがいないのでちと寂しい感じですが、正規ルートかも(笑)
何気にカロル先生が好きなので、カロルルートにしようかと思いましたがリタのツンデレも書きたかったのでオールで。
CLAP