「折角天の川もキレイに見えることだし、みんなで七夕やろうよ!」
目を瞬くだけの彼らに、織姫と彦星の話から教えて、目を輝かせたエステルが一も二もなく飛びついたお陰ですんなり七夕飾りを作る流れになった。
さて、まずは……
「まずはもっとデッカイ笹の葉を取りに行かないとね!」
「ささの葉ってコレじゃだめなのか?」
気合いを入れてそう言えば、ユーリが手に持った切れ端を持ち上げて問うてくる。
はそれをチッチッと否定した。
「七夕の笹って言えば、デッカイ方が豪勢だしいいに決まってるよ!」
「良く分かんねーけどそんなもんか。ま、要るっつーなら俺が取ってきてやるよ」
「あっ、待って待って、私も行く!」
言うが早いか身を翻したユーリを追って、も焚き火の傍から離れる。
「別について来なくてもいいんだぞ?」
「確かに笹の葉は分かり易いけど、短冊とか結びやすいの選ばなきゃ!」
やるなら徹底的に!という信念の元に言い切ったに、ユーリはなんだそりゃと笑った。
天の川が君臨する星明かりを頼りに、野宿の場所から離れてゴツゴツした山道を進む。
程なくして無事に大きな笹を手に入れた二人は、また元来た道を引き返し始めた。
「それにしても、って変なもんに詳しいよなー。この七夕とかってのも、エステルも知らないって言ってただろ」
そういうの、どこで仕入れて来るんだ?
そう聞かれ、は返答に窮した。
エステルは流石お城に閉じ込められて育っただけあってとても博識だ。
そのエステルも知らない……ましてや恋人同士の伝説……となれば、不思議がるのも道理だった。
しかし、いきなり「実は私、異世界から来たんだよねー」などとカミングアウト出来るはずもない。
「あー…とね、七夕って私が住んでた所ではみんな知ってる行事なんだよ。だから、ユーリたちが知らなくて逆にビックリしたっていうか……」
「住んでた所って? 帝都やダングレストじゃねーよな? もしかして別の大陸か?」
「大陸っていうか、島なんだけど……とにかく、遠い所なんだよ!」
「ふーん……」
冷や汗をかきながら何とか笑顔だけは保っているに、ユーリは明らかに納得していない目を向け、しかしふっと笑った。
「ま、言いたく無いなら無理には聞かねーけどな。何処の生まれだろうとがなことには違いねーし」
「ユーリ……」
その彼らしい太々しい笑みを優しい瞳を細めて向けられ、はカッと頬が熱くなった。
「っ……もう! ユーリってばほんとにイイ男だよね!」
「ぅわっ! 何すんだ!」
「不覚にもユーリにときめいちゃったから照れ隠し!」
「ときめいちゃったっておま…そういうことを平然とっ……ああコラ、照れ隠しはいいけど抱きつくなって……」
「あ、ユーリ赤くなってる! 照れちゃった!?」
「う…うるせぇ! いいから離れろって!」
天上の恋人たちが逢瀬をしている静かなはずの天の川の下で、色気に欠ける二人の騒々しいやり取りが続く。
楽しい仲間たちと、そしてこうやって結局何も聞かずにつき合ってくれるイイ男のユーリと、また来年も天の川の下で過ごせますように……
夜空に瞬く天の川に向かって、は心の中でそっと願い事を唱えたのだった。
100709
番外編の七夕選択式ドリーム。
まさかの二日遅れアップで、時期外れ感ビシビシですみませんでした。
一つ目の選択肢はユーリ友情ルート。
こんな風に気の置けない男女の友情っていいなーという妄想。