※このドリは、相方コロンから強奪した貰ったドリイラストを元にして書きました。
夢主のビジュアルがありますので、夢絵が苦手な方はご注意ください。
「後はりんごが三つと、パンが一つ……それとオレンジグミを一箱……で全部かな。うん、コレくださいなー!」
「はいはいー、ありがとうございますー」
どこでも安定した品質と価格を誇る幸福の市場<ギルド・ド・マルシェ>。
旅の途中に立ち寄ったとある町の店舗で商品を物色し、会計に渡したは一仕事終えてほっとため息をついた。
仲間たちは今頃宿屋で休んでいる頃だろう。
普段戦闘でほとんど役に立たない身としては、こういった必要物資の買い出しくらい率先して引き受けて当然だ。
店員が商品を袋に詰めてくれ、が代金を支払おうと財布を取り出した時だった。
背後からにゅっと手が伸びて、更にいくつかのビンをカウンターに乗せる。
「あ、それから一緒にコレとコレと……こっちのお酒もお願いねー」
「はいー、ありがとうございまーす」
「――て、レイヴン!?」
急なことに呆気に取られていたは、振り返ってそこに立っていた男に目を瞠った。
の護衛兼保護者とも言える彼は、宿屋に着いた途端に真っ先にダウンしていた筈だが……
「買い物に行くならおっさんに声掛けてくれたら良かったのにー。んもう、ちゃんってば冷たいんだからー」
「……でも、レイヴン疲れてるでしょ?」
「全っ然!平気よ、これくらいー! 俺様こう見えても普段から鍛えてるからぁー……」
「『おっさんもうこれ以上歩けなーい!』って散々駄々こねた挙げ句、一番にベッドに倒れ込んでたのは誰だったかなー」
「……ハイ、おっさんです」
目を逸らしながら片手を上げるレイヴンにため息をつき、それにとカウンター上の酒瓶たちを指さした。
「それにコレは何、コレはー! この後、みんなの武器も買い換えなきゃならないんだよ!?」
「い…いやー、青年も飲みたいって言うからさー! それにちゃんも勿論飲むでしょ!? お酒飲んで美味しいもの食べてあったかいベッドでゆっくり寝て……そしたら疲れも一気に吹っ飛ぶって!」
口車に乗せられた訳では無いが、その夢のフルコースに熱いシャワーも入れて想像したは、はっと我に返って「お願い!」とこちらを拝み倒しているレイヴンと目があった。
その様子を見て数秒沈黙し、ため息をつく。
「しょーがないなー。今日だけだよ?」
「さっすがちゃん! 愛してる!」
宙返りして喜び、嬉々として品物を受け取るレイヴンと、今のやり取りを聞かれて笑っている定員とに苦笑いを返し、はそそくさと一足先に店を出た。
どうもレイヴンと一緒に居ると、時々恥ずかしくって堪らなくなる――
その意味を深く考えることはせず、ドアをくぐった先の空に黒い雲が立ちこめているのを見て眉を顰めた。
「…と、どったの、ちゃん? ああ、今にも降りそうよねー」
酒瓶の入った袋を持って出てきたレイヴンが、軒先で立ち止まっていたの視線を辿ってそう呟く。
それから当然のようにが持っていた袋も持とうとしてくれるのでそれを断ると、中から勝手にいくつか重いものを取り出して自分の袋に入れた。
相変わらず細かい所で紳士な行動に礼を言い、二人揃って歩き始める。
「それにしても良くここが分かったね、レイヴン。特に誰かに言って来たりしなかったのに」
不思議に思ってがそう問えば、レイヴンはチッチッと指を振った。
「舐めてもらっちゃ困るわね。愛するちゃんの考えそうなくらい、俺様には手に取るように分かるって」
「……それなら、私だって愛するレイヴンの考えることは分かるよ?」
「おおっ……!」
赤い顔で期待感いっぱいにこちらを振り向くレイヴンに、はにっこりと笑った。
「どうせ、途中で今日ナンパするお嬢さんの目星でも付けようと思って出て来たんでしょ? かわいい子はいた?」
「それはもう! 俺好みのナイスバディなお姉さんが何人か……って、ちがーう!」
ジトリと白い目を向ければ、レイヴンは慌てて弁解するようにまくしたてる。
「違うからね!ちゃん! おっさん本当は……」
その様子がおかしくて、は堪えきれず吹き出した。
「……なんちゃってね。ゴメン冗談。一応分かってると思うから大丈夫だよ。そうじゃなかったら余分なお酒買うのなんてオーケーしなかったし?」
ありがとね、レイヴン。
そう言っては前を向いた。
今日は時間が遅かったのか、町の中心付近の宿はもういっぱいで、町外れの宿しか取れなかった。
見かけによらず異常にフェミニストなレイヴンのことだから、どうせ荷物や雨の心配でもしてくれたのだろう。
「――あ、雨」
店を出てまだいくらも行かない内に、ポツリとの頬に雨粒が落ちた。
帰るまでもたなかったかと思っている内に、あっという間に雨脚が強くなる。
「ゲゲッ……ちゃん、こっち!」
「レ…レイヴン!?」
雨を冷たいと感じる前に突然頭の上に何かが掛けられ、それがレイヴンの羽織であると認識する前に手を引かれて駆け出す。
とりあえず大きな木の下に入って、二人はほっと息をついた。
雨はバケツをひっくり返したようなどしゃ降りになっている。
「全然やまないわねー」
「……レイヴン、この羽織……」
「あぁ、そんなんでも無いよりマシでしょ?」
「でも、これなかったらレイヴンが濡れちゃうでしょ?」
「だーいじょーぶよ。俺様、こう見えて鍛えてるって言ったでしょ?」
だからそのまま被ってなさいって。
そう言って羽織りを被った上から頭を撫でられて、はぐっと言葉を飲み込んだ。
激しい雨音と温かいぬくもりと優しいにおいに包まれて……それがレイヴンのにおいだと思った瞬間、何やら一気に体温が上がる。
「やっ…やっぱり走って帰ろう! うん! このまま居ても全然やみそうに無いし!」
「えっ、ちょっとちゃん!」
居たたまれなくなって飛び出そうとしたのに、腕を捕まえられて呆気なく引き戻される。
勢い余ってレイヴンの胸に受け止められ、の心臓が大きく跳ねた。
「っっっ……れ…レイヴン……ちょっと…!」
「――……まあまあ、たまにはいいじゃない、ゆっくり雨宿りするってのもさ」
そう言う問題じゃない!と叫びたいの心中など無視して、レイヴンはにっこりと笑った。
「それとも、おっさんと二人じゃ嫌?」
間近から笑顔で顔を覗き込まれ、はぱくぱくと口を動かした。
「……レイヴンって、やっぱり女たらしだわ」
「ん? 何か言った?」
「――別に? レイヴンに恋人いないのが納得だと思っただけ!」
「なっ…何ですと――!? おっさんにカワイイ彼女が居ないのは、出来ないからじゃなく作らないからであって……!」
必死で弁解し始めるのにハイハイと適当に頷いて、は雨が降り続ける空を見上げた。
「まだ…もうしばらくは止まなくていいかな……」
口の中だけでそう呟いて、傍らのぬくもりを感じながら瞳を閉じる。
温かな雨宿りは、雨が止んで空に七色の虹がかかるまで続いた。
100706
番外編の梅雨ドリームでした。
恋人未満な状態だとこんなもんですが、両思い後はベタ甘な展開になりそうだなー…という妄想。
レイヴンはあれだけ胡散臭いビジュアルでいっぱい女の子寄って来るんだから、女の敵的天性のたらしに違いない!と思ってます。
『レイヴンとヒロインのドリ絵-梅雨編-』というリクでこのイラストを書いてくれた相方コロンに、最大の感謝を!
シチュとかビジュアルとかあまりに好みすぎて発狂しました。そうか……主人公はこんなにかわいかったんか……そりゃおっさんもメロメロだわ(笑)
美味しいお題をくれた相方よ、ありがとう!
CLAP