ドラゴンクエスト11本  「SWEET×SWEET」

B5オフ 40P ¥500 180225発行

ドラゴンクエスト11、主人公中心オールキャラ。
漫画と小説で一つのお話になってます。
全クリア後のサマディーでのお話。何故かホメロスさんも普通にデルカダールの将やってて、主人公が少々腹黒です。ファーリス王子多め。


内容紹介



■comic■ 一部抜粋




■novel■ 一部抜粋

「わぁ! 甘い匂いでいっぱいね!」
「どこもかしこも誘惑だらけで目移りしちゃうわね〜ん!!」
 太陽が燦々と照りつける砂漠の国――サマディー王国。
 魔王も邪神も倒し、平和になった世界でそれぞれの生活を送っていたイレブンたち勇者一行は、久しぶりにその城門前で待ち合わせていた。
 久しぶりと言っても、呪文があれば気軽に行き来できる世の中である。再会の挨拶もそこそこに早速門を潜れば、城下町はいつもの賑わいとはまた異なる盛り上がりを見せていた。
「話には聞いていたけれど、こんなに盛況だなんて」
「ど…どどどどーしましょう、お姉さま! あれもその隣も、ああ、こっちも!一度食べてみたかった憧れの逸品ばかりですわ!」
 いつもとは違う盛り上がりを見せているのは城下だけではなく、イレブンの仲間たち――女性陣も同じだ。
「まったく、何だって女どもはこんなに好きなんだ? 菓子ってやつが」
 カミュが呆れたように言うのは、まだ出会って間もない頃、ダーハルーネの町で同じようなテンションを目の当たりにしたからだろうか。
「カミュよ、女心の一つも分からぬでは、まだまだ一人前の男とは言えんぞ」
「なんと! 私も甘いものはどうにも苦手なのだが……」
 ロウとグレイグが何やらムフフ本片手に密談を始めたのでその二人は放っておいて、イレブンは目新しい物だらけの通りを眺めた。
 いつもは食料や生活用品が売られているバザールは、もっと派手な装飾の屋台に変わっており、それが道の両端を埋めるように所狭しと並んでいる。
 神殿風の石造りの民家も、教会までが花で飾られ、家々や屋台を結ぶように慶事を祝う垂れ布や飾りがあしらわれていた。
 雲一つ無い青空には、ポンポンと祝砲が上がり、オアシスの噴水も高く噴き上がって、まさにお祭ムード一色である。
「本当に国民から愛されてるのね、あの王子さま」
 戻って来てそう言ったベロニカの手には、早速何やら飴のようなものが握られていて、イレブンにも逆の手に持った同じ物を差し出してきた。
 そうだね、と笑って受け取ったイレブンは、口の中いっぱいに広がる甘みを味わいながら、ふむと数日前に受け取った手紙を思い出していた。
 流麗な字で綴られたそれは、サマディー王国の王子ファーリスからのもので、近々サマディーで開催される彼の生誕祭へ、イレブンたち一行に来て欲しいという招待状だった。
 ファーリスは容姿端麗で大らかな性格で、一般的な礼儀も常識も弁えているが、ただ少々難ありな部分がある。
 封筒に綴られていた『イレブン殿――貴殿の永久なる心の友 ファーリス』という表書きには、引っかかる部分を感じずにはいられなかった。
「ねぇ、ベロニカ。誕生日で困ったことがあるとしたら、何だと思う?」

 


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 余計な心配をしつつも進むと、前方に人だかりが出来ているのが見えた。
「イレブンさん、あれは何だろう?」
 人垣の合間から時折ひょこひょこと見える黒いウサギ耳のお陰で何の屋台かは分かったのだが、やたら女性の手を握っている金髪も垣間見えて、イレブンは顔を顰めた。
「――あら、勇者じゃないの」
「まあ、イレブンさん! ファーリス王子もご一緒でしたか。お二人は仲がよろしいのですね」
 ふと掛けられた可憐な声に振り返ると、クレイラモン王国の女王シャールと魔女のリーズレットが立っていた。
「シャール様! お体は大丈夫なんですか?」
「ええ、もう大丈夫です。旅慣れないせいでご迷惑を掛けて申し訳ありません」
 たおやかなシャールに丁寧にお辞儀をされ、ファーリスはとんでもありません!と狼狽えていた。
 聞く所によると、シャール率いるクレイラモン王国一行もサマディー王に招かれて二日前に到着していたらしい。しかし早々にシャールが体調を崩してしまい、今日まで伏せっていたという。
 彼女自身は旅慣れないせいだと言っていたが、雪国育ちのシャールにとって、この砂漠の気候はさぞ体に堪えるに違いない。
 ならばと隣のリーズレットを見遣ったが、胸元露出の高い魔女のどこにも汗をかいている様子は見られない。
「……ちょっと、勇者! さっきから一体どこをジロジロ見てんだい!」
 眼福の余りついじっと見過ぎたせいかそんな言葉が飛んできて、イレブンは内心の焦りを誤魔化す為に慌ててファーリスの腕を引っ張った。
「リーズレットは氷の魔女って呼ばれているのに、暑さには弱くないのかと思って。ねぇ、王子!」
「ええ? いや……そう…だね…?」
 へらへらと笑うイレブンとファーリスにため息をついて、リーズレットはそりゃそうさと氷の息を吹き出した。
「私は氷の魔女。何もせずにこんなとこにいちゃ、一刻も保たずに融けちまうよ。魔法でずっと体温を低く保ってるのさ。ま、これはこれで疲れるけどねぇ」
「…リーズレット、だから残っていた方が良いと言ったじゃないの」
「シャール、こんな暑い異国にぼんやりしたアンタを一人で来させられる訳ないだろう」
 聞きようによっては何だか痴話げんかのようなやり取りに苦笑していると、後ろから何やら不穏な気配が漂ってきた。
「…フン、人の店先で随分五月蠅いネズミが居ると思ったら、やはりお前か、イレブン!」
 予想通りの人物からの予想通りの不愉快な台詞に、流石のイレブンも笑顔が凍り付いた。
「――人のことを悪魔の子呼ばわりしたと思ったら、次はネズミだなんて、自分の劣等感を人に押しつけちゃいけないと思うよ、ホメロス」
「それは悪かったな。辺境のド田舎では、ネズミ臭の香水でも流行っているのか?」
「故郷の村は誰かさん一度焼かれちゃったから、香水なんて流行る余裕はまだ無いよ。それより、今日はあのハイセンスなビラビラの服は着てないの?」
 二人の間をクレイラモン地方も真っ青というブリザードが吹き荒れ、周辺の屋台の人々や、ホメロスを止めようとしていたらしいマルティナとシルビアはそのまま青い顔で凍り付いた。
 唯一事情が分からないファーリスは首を傾げているし、屋台の中のグレイグは一心不乱にクリームを泡立てている。
「何だい、この冷気は…!? 言っとくけど、私は何もしてな――…」
 シャールとの会話が終わったらしいリーズレットがこちらに気付き、本当に街一つを氷漬けにした前科からかそう声を上げようとした所で、ある一点を見て動きを止めた。
「お前はっ……!!」