Tales of Vesperia本  「Party!」

B5コピー 20P ¥200 161229発行

TOV、レイヴン中心のヴェスペリア家本。
漫画と小説で一つのお話になってます。
年の暮れも迫って来たある日、エステルの提案が発端で、みんなで集まってクッキー作りをすることに……。


内容紹介



■comic■ 一部抜粋




■novel■ 一部抜粋


 ――事の始まりは、数日前。
「オルニオンの孤児院に一人で!?」
「はい、行ってきます」
「ちょい待ち! 行ってきますじゃなくて!」
 頭痛のする米神を押さえ、レイヴンは目の前で不思議そうに首を傾げている帝国の歴とした姫君であり、副帝という公式な立場も持っているエステリーゼ姫――エステルにため息をついた。
 時期的に別件に手を取られている騎士団長のフレンや、ギルドの仲間達もたまたま都合が付かなかったとは言え、単身自力で陸路と海路を経由して別大陸のオルニオンまで気軽に行こうとする行動力は如何なものだろうか。
「一応聞くけど、護衛連れてこうとかって考えは……」
「今回の視察は急に決まったことですから。それに、ここのところシュヴァーンも忙しいでしょう?」
 以前エステルを筆頭にした仲間達から働き過ぎなのを盛大に怒られた前科がある手前、ここ数日徹夜続きだった身としては何も言えない。わざわざ『シュヴァーン』の名を出す辺り、今回も彼女は怒っているのかもしれなかった。
 しかし、だ。
 だからと言って、到底見過ごせる話ではない。レイヴンはむむむと考え、攻め方を変えてみることにした。
「そうなのよねー。おっさん、扱き使われて疲れちゃったわー。だから、ここいらでご褒美欲しいなーと思ってたとこなんよねー」
「ご褒美…です?」
「そ。久しぶりに、《凜々の明星》のみんなで何か楽しいことしたいって思ってね。……あぁ〜、そう言えば、嬢ちゃんが行こうとしてるオルニオンで今度やる新しい祭、孤児院でも参加したら子ども達も喜ぶし、それをみんなで手伝ったらきっと……」
「きっと、楽しいです!」
 わざとらしすぎるかと思った誘導にも、思い切り素直に乗ってくれて目を輝かせている少女は、やはりレイヴンにとってはいつまでたっても幼い姫君のようなものだった。
 そう言えば、昔もこんな笑顔を見たな……と記憶を辿り、確か貴族令嬢から貰ったクッキーを幼いエステルにあげた時だったと思い出した。
 すると、全く同じタイミングでエステルが「クッキー…」と呟いたので、虚を突かれる。
「昔、シュヴァーンにクッキーを貰ってすごく嬉しかったのを思い出しました。だから、子どもたちとも一緒にクッキーを作ったら、きっと楽しいと思うんですが……どうでしょう?」
「……いいね、楽しそうだ。それに、今度の祭は飾り付けにもこだわるらしいから、クッキーで飾りも作ったらいいんじゃない? 子ども達も後から食べられるし」
「レイヴン、それです! 私、早速試作を作ってきます!」
「あ、嬢ちゃん! おっさん、どうせみんなに声掛けに行くから、そのついでに嬢ちゃんをオルニオンに送っていくわねー!」
 張り切って準備していた旅装を解き、厨房に走って行く後ろ姿に声を掛ければ、「ありがとうございます!」と返事が返ってきた。
 果たして、何とか副帝陛下の一人旅は回避できたものの、レイヴンは急遽舞い込んだ予定に、直近の仕事を照らし合わせて調整に頭を痛める。
 それでも、レイヴン自身も楽しみであることには違いなく、口元を緩めながら足早に歩き出したのだった。