Tales of Berseria本  「gift」

B5 40P ¥500 161229発行

TOB、ベルベットとライフィセット中心オールキャラ本。
漫画と小説です。
ベルベットとパーティメンバーそれぞれの話など、ベルベット幸せ本を目指しました。


内容紹介



■comic■ 一部抜粋




■novel■ 一部抜粋


「――で? どうしたんだ、ライフィセット」
「え?」
 不意に話しかけられ、思考に沈んでいたライフィセットは、我に返って顔を上げた。
「何を考えている? 一人で抱え込まない程度には、俺たちは信用されていると思っていたが」
 ロクロウとアイゼンにそう聞かれ、思わず「二人には敵わないや」と苦笑してしまった。仲間たちから子ども扱いされることも多く、いつもそれに反発しているが、こんな風にすぐ顔に出るようでは子どもだと言われてもしょうがない。
「丁度、みんなに相談しようと思ってたんだ。――さっき港で、白冬祭の話を聞いたでしょ。あの後、あのおばあさんにお祭りについて教えて貰ったんだ」
 ベルベットは最早恒例となっている、安宿に入ってすぐの部屋掃除に掛かりきりで不在だ。
 部屋を追い出された残りの女性陣と、ついでに掃除するからと同じように追い出された男性陣は、ロビーで暖を取りつつ、のんびりと寛いでいた。
 ――いや、もっと言ってしまえば、暇を持て余していた。その暇つぶしにも打って付けだったのか、全員が興味を示したのを確認して、ライフィセットは話を続けた。
 老婆曰く――白冬祭は、初雪が降った日から五日間続けられる、アバルの伝統行事らしい。祭の間は村を上げてご馳走を作り、村の外の人間にも振る舞って持て成す。そして、祭の間に”祝福”を貰った人は、新しい一年を幸せに過ごせるという言い伝えがあるらしい。
「その”祝福”というのは何だ?」
 一早く口を開いたアイゼンの質問は、ライフィセットも同じように老婆に聞いたことだった。
「うん、特に決まりは無くって、何でも良いらしいよ。大体は贈り物やその人のための行動で、相手に”幸せ”だって感じて貰えたら良いみたい」
「何と一風変わった祭じゃのぅ」
 カノヌシの封印と関係があるのか、それとも地脈の関連性か……小さな声でぶつぶつと呟いているマギルゥも、珍しく興味を持ったようだった。意外とお笑い芸人では無く、こういった伝承や風土史といった語り部に向いているのかも知れない。
「重要なのが、この”祝福”が、アバルの村人だけに有効らしいってことなんだけど……」
「資格があるのは、この中ではベルベットだけということですね」
「なるほど。それで、ライフィセットは……」
エレノアとロクロウに一つ頷いて、ライフィセットは面々を見回した。
「僕たちでベルベットに白冬祭をしてあげようよ! ずっとあの村で暮らしてきたんだから、きっとお祭自体にも大切な思い出がたくさんあると思うんだ。それに……」
 ベルベットには、幸せになって欲しい――口にするのが何となく気恥ずかしくて俯いたライフィセットの頭をアイゼンが乱暴に撫でた。
「いいだろう。あいつも船に乗ってる限りは、もう家族のようなものだ。家族の故郷の風習は大事にせねばならん」
「ふふん、面白い。わしも乗ったぁ! あやつを感涙で噎び泣かせてやろうぞ!」
「いいや、俺の方が喜ばせる自信がある。何せ、この中じゃあ一番付き合いが長いのはこの俺だ!」
「そんなに変わらないじゃありませんか! それに、ロクロウに女性を喜ばせられるとは思えません」
「それに関しては同感だな」
「何だと、アイゼン! そういうお前はどうなんだ!」
「俺を誰だと思っている。毎回妹への贈り物で苦労しているんだ。贈り物については熟知している」
「勝負するか?」
「面白い」
 勝負などという予想外の展開に、ライフィセットは慌てて割って入った。
「ちょっと待って! ベルベットを喜ばせて白冬祭をしてあげたいってだけで、別に勝ち負けとかじゃないよ。大体、どうやって勝敗を付けるのさ」
「それは……やはり、ベルベットに判定してもらうのが一番じゃないでしょうか? 誰の”祝福”が一番嬉しかったのか、と」
「エレノアまで!」
「す…すみません……」
「ほほぅー。坊よ、一番ベルベットのことを分かっておるのは坊かと思っておったが、さては自信が無いのかえ?」
「そっ…そんなことないよ! 僕が一番ベルベットを喜ばせられる!」
 反射的に言ってしまってから、はっとした時にはもう遅い。
「じゃあ、明日から勝負開始ってことだな!」
「五日後、ベルベットに勝者を決めて貰いましょう」
「せいぜい、首を洗って待っているんだな」
「大魔法使いの本気を見せてやろうぞ」
「……僕だって、負けないよ」
 何故こうなったと思っても後の祭。
 諦めのため息をついたライフィセットも、宣戦布告に参加して、斯くしてアバルの白冬祭――兼、ベルベットへの”祝福”合戦は、幕を開けたのだった。