Tales of Vesperia本  「NOIR」

B5 3
6P ¥500 141229発行

TOV、レイヴンとユーリ中心のヴェスペリア家本。
漫画と小説で一つのお話になってます。
エステルの殺害予告に対抗して、聖騎士ユーリと生家絡みで単独行動するレイヴンが頑張るシリアス本。


内容紹介



■comic■ 一部抜粋




■novel■ 一部抜粋


 空気を震わせるファンファーレの音が高く鳴り響き、平和の象徴と言われる白い鳩が一斉に飛び立つ。抜けるような青空と、そこに差しこんだ白とのコントラストが目を焼き、青年――ユーリ・ローウェルは目を細めた。
「……なぁ、ラピード」
 堅苦しく居心地が悪いのは、慣れない衣装のせいだけでは無い。傍らの相棒に声を掛ければ、どこか懐かしい鎧に身を包んだ彼もユーリと同じような心境なのか、いつもより弱々しく返事を返した。
「いくら何でも、場違いって奴だよなぁ…こりゃ」
「……ワフ」
 一人と一匹が深いため息をついたのと、彼らが丁度群衆から見える位置に差し掛かったのは同時。瞬間、集まった人々から大きな喚声が上がり、ユーリは引き攣る表情を堪えて顔を上げた。
 いつも適当に背中に流している髪は引っ詰められて高い場所で結われているし、首元まできっちりボタンの留まった服は堅苦しいし、足を覆う鎧に至っては邪魔以外の何物でも無いが、それも今は我慢するしかない。
 決められた場所を進みながら再度ため息をついたユーリは、一歩一歩足を運び、より大きくなっていく声に飲まれながら、今日に至るまでのことを振り返っていた。

 星喰みとの戦いが終わり、世界から魔導器(ブラスティア)が無くなってからもうじき三年。
様々な混乱や障害を乗り越え、世の中は大きく形を変えつつあった。
表面上魔導器を独占していた帝国の力は弱まり、貴族や一部の特権階級だけが優遇される『身分差別』を無くそうという世論が大きくなり始めたのは数ヶ月前だ。皇帝に就任したヨーデル自身も身分差別の撤廃を推進した為、その気運はますます高まった。
 そんな中、今までは一部の者だけにしか知らされなかった世界の生活を一変させた星喰みとの戦いの一部始終を市民にも明るみにすべきとの声が上がり、関係者協議の末、帝国はこれを公表。
ギルド〈凜々の明星〉は一躍脚光を浴び、『世界を救った英雄』や『魔導器を消し去った諸悪の根源』などと賛否両論あったが、結果として知名度は上がり、実力派ギルドとして軌道に乗り始めた。
しかし、星喰み公表に際しては当然良いことばかりでは無かった。
 ザウデ不落宮復活の鍵であり、皇帝家が権力を握った理由としても『満月の子』という存在が明かされ、副帝エステリーゼがそれであるということも広まったのだ。
 その結果、エステリーゼ――副帝である以前にユーリたちの仲間でもあるエステルは、様々な立場の人間から命を狙われることになった。

「殺害予告なんつーふざけたもん、本人が真に受けて無いからいいようなもんの……いや、それはそれで問題か」
 用意された道を進みながら、ユーリはため息をついた。