■novel■ 一部抜粋
凜々の明星メンバーの元にレイヴンから緊急の手紙が届けられたのは、冬に入った頃だった。
「それにしてもおっさんの奴、全員集めなきゃならない程のヤマって、またどんな厄介事なんだか」
前の依頼を急いで片付けて合流したユーリの言葉に、そうねとジュディスも応じた。
「おじさまから手伝って欲しいと言ってくるなんて、初めてだもの」
「うう…。レイヴンが頼ってくれるのは嬉しいけど、もの凄く大きいギガントとかだったらどうしよう……」
「ていうか、逆に大した事無い奴だったらぶっ飛ばしてやるわ! こっちはいいとこだった研究置いてきてんだから!」
「リタに研究の手を止めさせるなんて、流石レイヴンです!」
「なっ…違うわよ! べ…別にあたしはっ……」
心配性のカロルは早くもモンスター図鑑を取り出して入念な予習に入り、研究を邪魔されてご機嫌斜めのリタは素直じゃない発言で天然エステルに突っ込まれていた。
「しかし、フレンまで呼ぶとは、一概にギルドの件でも無いのかのう……のー、ラピードはどう思うかの?」
「ワゥ?」
船で帝都経由で合流したパティは意外にまともな疑問を口にしたが、話を振る相手がラピードで、尚かつお揃いのおでん串を咥えていたので緊張感は皆無だ。
苦笑したフレンはラピードの頭を撫でて、キリリといつもの真面目な顔を更に引き締めた。
「レイヴンさんがわざわざ全員呼んでやろうとすることだ。きっと並大抵の相手じゃないよ」
「強いといいわね」
「えぇっ、モンスター討伐で決まり!?」
「そりゃ、こんなとこで『手伝って欲しい件』つったら、それ以外無いんじゃねーか?」
全員の元に届いた協力要請――そして、指定の場所はオルニオン北東部の平野だ。
日時が今日の昼下がりというのは不自然な感じもしたが、夜行性のモンスターで、今から作戦を立てて臨もうということなのかもしれない。
「フレンもエステルも何も聞いて無いんだから、結構深刻だね。みんな、気を引き締めて行こう!」
首領(ボス)の言葉に、おう!と全員で呼応したところに、待ち合わせの目印である一本の大木が軽い上り坂の先に見えてきた。
真っ先に駆け出したカロルは、その根元が見えた所で思わず足を止める。
「えっ……!?」
「? どうした、カロル先生……! こりゃ……」
「! レイヴン……?」
大木が見えた辺りで一様に目を瞠って立ち尽くした凜々の明星一行の先では、待ち合わせ相手のレイヴンが待っていた。
ただし、戦闘準備ではなく、お茶の準備をして。
ようやく一行に気付いたレイヴンは、へらりと笑って手を上げた。
「よっ! いらっしゃーい!」
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