Tales of Vesperia本  「HARVEST」

B5 36P ¥500 131027発行

レイヴンとヴェスペリア家中心で、漫画と小説。
秋をアピールするイベントの企画依頼に奮闘するお話です。
写生大会・オータムフェストでの屋台勝負・ハロウィン――ハロウィンではキャナリ・イエガー・ナイレン隊長・ヘルメス・閣下も登場します。


内容紹介



■comic■ 一部抜粋




■novel■ 一部抜粋


「まぁ、困ってるみたいだし、俺たちも特に今は急ぎはねぇーしな。だが秋って言やぁ、いろいろと『何とかの秋』って言うじゃねーか。冬ほど宣伝に困るとも思えねぇんだが……」
ユーリが不思議そうにそう零せば、とんでもない!とロベルトは熱弁を振るった。
「確かに秋は意欲向上する季節とか言われていますが、それはイベント事が少なくて余裕がある……裏を返せば、何もすることがないってことなんです!」
「それはちょっと被害妄想なんじゃ……」
「いいや! 君みたいな若い子には分からないかもしれないけど、世の中には秋の良さを介さない駄目な大人が多すぎ……」
「まぁまぁ。いいじゃないのよ、秋! おっさん、秋好きよー」
「! ほ…本当ですか!?」
ロベルトがカロルにまで絡み始めたのを見てレイヴンが口を挟めば、キラキラした目を向けられ、カロルにはえっと振り返られた。
「意外だね、レイヴン」
「ん? どして?」
「だって、水着であれだけテンション上がってたじゃない。だから…えっと…寒くなると減るでしょ、ろ…露出度とか」
顔を赤くして言う純情な少年に、レイヴンは得意げな顔で指を振った。
「ちっちっちっ、甘いわよ少年!  寒くなって確かに露出度は減るけど、コートの裾から覗く美しい足とか、上着かき合わせた時のボディラインとか、ハイネックから覗くうなじとか! 見えないからこその男の浪漫がそこにはあるのよ!」
「ふっ…流石だな、おっさん」
「分かってくれるかね、ユーリ青年!」
力説したレイヴンに今まで黙っていたユーリまでが深く同意して、二人でがしりと握手までしているのを目の当たりにしたカロルは、半眼でため息をついた。
「…僕、あんな大人にはなりたくないな…」
尤もなことをしみじみ呟く少年の横から、流石に気後れした様子のロベルトが遠慮がちに口を開く。
「あのー…ところで、依頼は受けていただけるんでしょうか」
「…じゃあ、レイヴンが担当だね」
ため息と共に言ったカロルに、機嫌良く秋の女性の魅力について語っていたレイヴンが、ん?と動きを止める。
「そうだな。これだけ秋の素晴らしさを熟知してんだから、任せても安心ってもんだ」
「い!? いやいやいやー! それは別でしょ。ちょっと待って青年少年、大体おっさんはー……」
「夜空に瞬く凛々の明星に誓って、お仕事お引き受けします」
慌てたレイヴンの必死の反論も空しく、カロルは無情にもそう宣誓を口にした。
そうなってから何を言っても、最早後の祭。凛々の明星のボスであるカロル少年に滅法弱いレイヴンには、断る術など無かったのである。



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「ちょっ……待った、リタっち! 出来たって一体何が……」
「決まってんでしょ! いないって証明するのよ!」
「いないって何だよ?」
「だからお化けに決まって……あぁー!もう! いいから早くこっち来て!  ここから動かないでよ!……じゃあ行くわ――それ!」
ユーリと二人、顔を引き攣らせながらも言う通りに従えば、すぐに少し離れた場所から先ほどの装置が飛んできた。
装置は空中でポンポンッとやたらファンシーな音を立てて破裂し、白い煙が吹き出す。
まともにその煙を吸ってしまったレイヴンとユーリはげほげほと咳込み、煙が晴れて来た光景を目にして思い切り目を瞠った。
「な……こりゃあ一体……」
「どうなってんの、これ……」
呆気に取られたユーリとレイヴンの呟きも?き消されるくらい、そこには今まで居なかった筈の大人数がひしめき合い、喧噪で溢れていた。
二人が移動した訳ではない。リタや他の仲間達もいるこの場所に、他の人々がいきなり出現したのである。
そして二人は同時に、その中に知り合いがいることを見つけて唖然とした。
「嘘……だろ……」
「…………はは、ハロウィンってこういうことなのね……」
そこには、もう二度と会えないと思っていた――死んでしまった人達の姿があったのである。